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「イラスト:影山直美」
 『 小林光恵 / 書籍 』
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小林光恵さんの
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第24回
 二つのちょっとした音

                          @ ← A

 「島田さん(幸枝さんの苗字)、最近、歩き方にどことなく険があるね。入院してるとね、誰の足音なのか、その足音でその人の調子がどうなのかわかるようになるんだ。で、最近、島田さん、なんとなくぴりぴりしている歩き方」
 幸枝さんはどきりとして、言葉が出てこなかったそうです。
 幸枝さんが、トイレのドアを外側から押さえて(Aさんは、内側から鍵の開け閉めができない状況) Aさんのトイレが終わるのを待っていると、彼はトイレの中からこう言ったそうです。
「大丈夫、いままでどおりで大丈夫だ」
 そして、言葉のあとに、ぷうー、という大きなオナラの音がして、Aさんは「いまのはオナラじゃないよ」「笑っていいよ、グフフ」と笑ったのだそうです。
 幸枝さんが言います。
 「Aさんのぷうーというガスの音がものすごくものすごくおかしくて愛嬌があって、笑いをこらえるのがたいへんだったんです。<オナラじゃないよ>というとぼけた言い方もおかしくって、ナースステーションに戻ってからお腹抱えて笑ってしまったんですけど、Aさんの<大丈夫>という言葉を思い出して涙がこぼれてきてね、ありがたいなと思いました」
 そして気がつけば、例の二つの音は気にならなくなっていたそうです。

小林光恵

新刊 『片づけられない女は太る』
小林光恵 こばやしみつえ
小林光恵のホームページ http://www02.so-net.ne.jp/~n-three/

 茨城県生まれ、東京警察病院看護専門学校卒業。看護婦として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務。その後編集者を経て独立。現在は執筆を中心に活動している。
マンガ 『 おたんこナース 』、日本テレビ系列 『 ナースマン 』原案者。
著書に 『 ナースのおしゃべりカルテ 』(幻冬舎文庫)、『 12人の不安な患者たち 』(集英社文庫)、『ケアとしての死化粧―エンゼルメイク研究会からの提案』(日本看護協会出版会)等多数。

小林光恵 最新刊
『「片づけられない女」は太る』2005年11月15日発行
出版社/新講社
価格1155円(税込)

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