| メ イ ン ペ ー ジ |
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さて、机ではなくベッドを並べている二人は、お互いが昔「一心同体」だったことのある間柄であることにまったく気づいていません。お互いの結婚後の苗字も知らず、顔も合わせていないのですから仕方ありません。この二人に限らず私たちは、縁ある人だと気づかずに、日々たまたま電車で隣に座ったり、スーパーですれ違ったりしているのかもしれません。 と、病室のドアに小さくノックがあり、男性と年配の女性が入ってきて、敏子さんのベッドサイドに行きます。 「あら、早いじゃない。あれ? 母さんまで来てくれたの?」と敏子さんが目を丸くし、「膝が痛いんだから無理しなくてもいいのに」とつづけながら起き上がります。 すると、お母さんは「だって、トッコが救急車で運ばれたって聞いて驚いちゃってさあ。膝がどうのこうの言ってらんないわよ。あたしの大事なトッコちゃんだもの」 と言って敏子さんの頭を撫でます。 「やっだ、やめてよう」 敏子さんは、それまでは48歳の女性らしい声と口調で病院の医師やナースとやりとりしていましたが、お母さんの顔を見たからか、少し子供っぽい甘えたような口調になりました。 このやりとりを小百合さんはぼんやりと聞き流してましたが、聞き覚えのある声とやりとりを思い出し、はっとしたのです。敏子さんのお母さんは学校帰りに途中までお迎えにくると必ず「あたしの大事なトッコちゃん」と言って娘の頭を撫で、敏子さんは恥ずかしそうに「やっだ、やめてよう」としたものでした。もしかして……。 小百合さんは思い切ってカーテンごしに「トッコちゃん? トッコちゃんですか?」と声をかけました。 そして二人は病室で再会を果たしたのです。 いろんな再会の地あることと思いますが、病室も再会の場所のひとつなのですね。 喫茶店で小百合さんからこの話を聞いた私は、「私も誰かと劇的な再会をするかも」と思い、そのあとに寄った貸ビデオ屋さん、本屋さん、そして地下鉄の中で、終始きょろきょろしてしまいました。 |
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