メインページ  今月のコラム  フォーカス  こちら、ナース休憩室別館
 今月のアンケート  医療・福祉関連リンク  ブレイクタイム  医療・福祉のルーペ
こちら、ナース休憩室別館
ご意見・ご要望はこちらから

こちら、ナース休憩室別館
「イラスト:影山直美」
 『 小林光恵 / 書籍 』
小林光恵さんの書籍は、こちらからお求めになれます
ピーケーワン

小林光恵さんの
こちら、ナース休憩室別館


第23回
 再会?

                          @ ← A

 さて、机ではなくベッドを並べている二人は、お互いが昔「一心同体」だったことのある間柄であることにまったく気づいていません。お互いの結婚後の苗字も知らず、顔も合わせていないのですから仕方ありません。この二人に限らず私たちは、縁ある人だと気づかずに、日々たまたま電車で隣に座ったり、スーパーですれ違ったりしているのかもしれません。
 と、病室のドアに小さくノックがあり、男性と年配の女性が入ってきて、敏子さんのベッドサイドに行きます。
「あら、早いじゃない。あれ? 母さんまで来てくれたの?」と敏子さんが目を丸くし、「膝が痛いんだから無理しなくてもいいのに」とつづけながら起き上がります。
 すると、お母さんは「だって、トッコが救急車で運ばれたって聞いて驚いちゃってさあ。膝がどうのこうの言ってらんないわよ。あたしの大事なトッコちゃんだもの」
と言って敏子さんの頭を撫でます。
「やっだ、やめてよう」
 敏子さんは、それまでは48歳の女性らしい声と口調で病院の医師やナースとやりとりしていましたが、お母さんの顔を見たからか、少し子供っぽい甘えたような口調になりました。
 このやりとりを小百合さんはぼんやりと聞き流してましたが、聞き覚えのある声とやりとりを思い出し、はっとしたのです。敏子さんのお母さんは学校帰りに途中までお迎えにくると必ず「あたしの大事なトッコちゃん」と言って娘の頭を撫で、敏子さんは恥ずかしそうに「やっだ、やめてよう」としたものでした。もしかして……。
 小百合さんは思い切ってカーテンごしに「トッコちゃん? トッコちゃんですか?」と声をかけました。
 そして二人は病室で再会を果たしたのです。
 いろんな再会の地あることと思いますが、病室も再会の場所のひとつなのですね。
 喫茶店で小百合さんからこの話を聞いた私は、「私も誰かと劇的な再会をするかも」と思い、そのあとに寄った貸ビデオ屋さん、本屋さん、そして地下鉄の中で、終始きょろきょろしてしまいました。

小林光恵

新刊 『片づけられない女は太る』
小林光恵 こばやしみつえ
小林光恵のホームページ http://www02.so-net.ne.jp/~n-three/

 茨城県生まれ、東京警察病院看護専門学校卒業。看護婦として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務。その後編集者を経て独立。現在は執筆を中心に活動している。
マンガ 『 おたんこナース 』、日本テレビ系列 『 ナースマン 』原案者。
著書に 『 ナースのおしゃべりカルテ 』(幻冬舎文庫)、『 12人の不安な患者たち 』(集英社文庫)、『ケアとしての死化粧―エンゼルメイク研究会からの提案』(日本看護協会出版会)等多数。

小林光恵 最新刊
『「片づけられない女」は太る』2005年11月15日発行
出版社/新講社
価格1155円(税込)

前ページへもどる
(C) 2003 Nursing-plaza.com steering committee All rights reserved.No reproduction or republication without written permission.
掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。