| メ イ ン ペ ー ジ |
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「じいちゃんにとってとおいところはな……トイレだ。距離的にはすぐそばにあるのに、身体の自由がきかなくなるにつれて、どんどんトイレがとおくなっていくんだ。これほどとおく感じるものはない」 それを聞いた亮太君は、少しのあいだきょとんとしていましたが、その後、顔を崩し「じいちゃんが可哀想」と言って泣き出してしまったのでした。そのとき与四郎さんは「亮太、ここは泣くところではないんだ。<ほほう、なるほど、そうか、そういう捉え方もあるんだ、まいった、じいちゃんに負けました、くう>、といって悔しがるところだよ」と言いながらも、ひ孫の涙にジーンときてしまったのでした。 与四郎さんは、うっすら涙を浮かべて、亮太君の写真にふたたび語りかけます。 「亮太、今日、顔を出したら、また、とおいところは何処か、を二人で言い合って、おまえがどのくらい成長したか、試してやるぞ。まさか、また、地球の裏側なんて言わないだろうな。亮太、早く来るんだ」 と、襖が開き、与四郎さんの奥さん、つまり亮太君のひいおばあさんが部屋に入ってきます。ハンカチで目頭を押さえながら。 「気持ちはわかるけど、空想して亮太の写真に話しかけるの、やめてくださいよ。せつなくなりますから…」 「………」 亮太君は、ひと月前に重い病気にかかり、与四郎さん宅のすぐそばの病院に入院中なのです。与四郎さんも亮太君も動くことができず、近くにいるのに会えないのです。与四郎さんにとって、今、いちばんとおいところは、亮太君の病室なのです。 一日も早く、二人が再会できるのを陰ながら祈っています。 |
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