| メ イ ン ペ ー ジ |
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このチケットを、ユカさんだけが使っていなかったのです。彼女は、メンバーのわがままチケットにつきあうことは苦になりませんでしたが、自分が使うことには抵抗がありました。グループのリーダーとしてなんとなくメンバーに弱みをさらけ出してしまうのはまずい気がしていたのです。それに、看護学生生活はたいへんな日々ではあったものの、彼女はそのチケットを切りたいと思ったことはありませんでした。 ユカさんは、四人の会話を背中に感じながら、沸いたお湯で彼女らのお茶を入れます。そして思います。 <きっと、四人とも、内心、首を傾げているに違いない。いや、四人は待ち合わせてから一緒にここにきたのだから「ユカ、どうしたんだろ。らしくないよね」などと道々話しながらきたのかもしれない。どうしよう。たしかに、私が配線を頼むなんておかしいもの> ユカさんは、グループの中で一番、電気機器類や配線などに強いタイプなのです。学校の教材の古い心電図計を直してみせ、クラスメイトや先生を驚かせたこともあったユカさんが、配線がわからないなんておかしいのです。新しいテレビの配線など自分でやろうと思えばすぐできることでした。ユカさんは、「ユカなら、配線なんて自分でできるじゃない。なにかあったの?」などとメンバーに問われたら困ると思いました。最近、取り立てて変わったことはない。日々、ささいな煩わしさと向き合いちょっとした楽しい時間を過ごして暮らしている。結婚はまだしないけれど、気の合う彼氏もいる。仕事にもときどき自分を鼓舞しながら手を抜かずに取り組んでいる。なのに、なぜ私は、いまさらわがままチケットのことなど持ち出してメンバー招集をかけたのだろう。見え透いた嘘までついて。この、自分でさえよくわからないことを、メンバーに問われたら、彼女は、自分の中の、なにかしら張り詰めている糸がぷつりと切れてしまうような気がしました。 はたしてメンバーたちは、昔話や近況など途切れずに話しながら、そしてああだこうだといいながら配線などを済ませ、ユカさんが聞かれたくないことはまったく聞かずに、みんなでご飯を食べてにぎやかに過ごし「じゃあ、また。これで、わがままチケット、全員終了!」と帰っていきました。 ユカさんは、わかっていました。子供がいる人、遠くに住む人、と、急な召集に応じるためには、みんなたいへんな調整が必要だったことを。 ユカさんは、いまでも、どうして唐突にみんなに召集をかけたくなったのかよくわからないそうですが、実習グループメンバーに集まってもらって、なにかしら欠けた部分が埋められた気持ちになったのはたしかだそうです。 |
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