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「イラスト:影山直美」
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第19回
 大隈さん、ショッピングセンターに行く

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 意外な展開に家族全員が眼を丸くしましたが、大隈さんが「早く! 早く!」というので、孫娘さんの操作で撮影とあいなったのです。みなで撮りたいのかと思い家族全員でプリクラのボックスに入ると大隈さんが「入ってくるな」というので、操作役の孫娘さんを残してみんながボックスから出ようとすると、奥さんに向かって「おまえはいろ」というのでした。
 かくして大隈さんは奥さんと二人で、ハワイチックな模様が入るプリクラ写真を撮影し、それが終わるとすぐに「帰る」と言い出したのです。
 帰宅の車中では、口をへの字に曲げて黙っている大隈さんを横目に、みなが心の中でニヤニヤ。出不精の大隈さんが三度もショッピングセンターに行きたいと言ったのは、奥さんと二人でプリクラを撮りたかったからだっただとわかったからです。一回目に「帰る」と言い出したのは、女子高生がプリクラを占拠していたため自分が撮影できないから、二回目は一緒に撮る奥さんが行けないからだったのです。奥さんは車中で、なにかを思い出したように「あっ、そうだった」と声をあげました。
 帰宅後、奥さんは大隈さんのベッドサイドに行き、言いました。
「お父さん、そういえば、いつか一緒にハワイに行こうって、若いときに言ってくれたんですよね。もしかして、それを思い出してハワイに行く変わりに写真を?」
 すると大隈さんは、ほんのり頬を染め、そっぽを向いてかすかに頷いたのです。

 この話は、実は私がある方に聞いた話を別の友達にしたところ、まわりまわって、話の出所を知らない友達が私に話してくれたのでした。
 おもしろいのは、ラストの展開が変わっていたことです。私がある方に聞いた話、つまり実際の話では、大隈さんのベッドサイドに行って奥さんは、「ハワイの柄のついた写真などで終わらせないでくださいね。若いときの約束を守ってください。いつか絶対にハワイに連れてってくださいね」と冗談まじりで言ったら、大隈さんは「うるさい!」と怒鳴って、せっかく撮ってきたプリクラ写真をゴミ箱に捨ててしまったのです。
 ラストを変えてしまった友達が誰なのか、だいたい見等がついています。その友達は、このところ恋人といろいろあって、どうしてもこの話をほのぼのとした結末にしたくなるような心理状態だったのだと思います。

小林光恵

新刊 『片づけられない女は太る』
小林光恵 こばやしみつえ
小林光恵のホームページ http://www02.so-net.ne.jp/~n-three/

 茨城県生まれ、東京警察病院看護専門学校卒業。看護婦として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務。その後編集者を経て独立。現在は執筆を中心に活動している。
マンガ 『 おたんこナース 』、日本テレビ系列 『 ナースマン 』原案者。
著書に 『 ナースのおしゃべりカルテ 』(幻冬舎文庫)、『 12人の不安な患者たち 』(集英社文庫)、『ケアとしての死化粧―エンゼルメイク研究会からの提案』(日本看護協会出版会)等多数。

小林光恵 最新刊
『「片づけられない女」は太る』2005年11月15日発行
出版社/新講社
価格1155円(税込)

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