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「イラスト:影山直美」
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小林光恵さんの
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第18回
 ナースになりたい女子高校生

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 「おばあちゃんはね、あの年齢だし、はっきりしているようでいて物忘れが激しい面があるの。だから携帯の着信音をユミが変えたことを忘れててね、しかも、前の着信音に慣れきってたし、年寄りだから低音は聞きにくいから、私が何度電話しても取らなかったの。心配してホームの人に電話したら、<美穂さんから電話がないって寂しがってる>って言われてさ。着信音が変更されただなんて誰も知らないし、もしかして、急激にボケちゃったのかな、と思って、直接話したいと思って、おばあちゃんにホームの電話口まで来てもらおうとしたら、おばあちゃん、あわてちゃって、足首捻挫しちゃったのよ。年寄りが怪我すると、それをきっかけに寝たきりになることだってあるのよ。ユミ、おばあちゃんの携帯の着信音変えてから、一度もその後の経過とか気にしてなかったでしょ。私にも伝えてくれなかったし、中途半端よ」
 ユミさんは、自己嫌悪の渦の中でした。美穂の言うとおりだ。多恵さんのことを知っているようでなにも知らなかったし、お年寄りの特徴についても考えず、ちょっとした親切をしたつもりが、それがあだになっていたなんで…。自分だって、聞きなれた着信音を変更した直後は、音がしていても自分の携帯電話だと気づかないことだってあるのに、私はなんてうかつなんだろう。
 さしあたり、多恵さんの着信音はホームの人の手で元の曲に戻してもらったそうで、足首の捻挫も軽くて済み、いままでどおり多恵さんは寝起きできていると聞き、ユミさんは胸を撫で下ろしましたが、看護師への道についてはすっかり自信をなくし、冒頭の結論へと達したというわけです。
 以上、人づてに聞いた話です。ユミさんはその後も、看護の道へは進まない意思が固いらしい様子だと聞きました。多恵さんの件で自己嫌悪に陥って「向いてない」と思ったユミさんは、むしろ看護職に向いている気がするのですが、よその人の進路についてどうこう言える立場ではないので、残念だけれどそれも仕方ないかな、と私は思っていました。
 そこへ、つい数日前、ユミさん情報が届いたのです。親友の美穂さんから「こないだは興奮して言いすぎた。看護師は目指してほしい」と連絡があったり、多恵さんからも「看護師になったほうがいい」と言われたりし、とどめは用事で病院に行った際にすれ違った看護師が「ものすごくかっこよかった」ため、看護大に進路を戻したとのことでした。来春彼女はきっとやる気に満ちた看護学生になっていることでしょう。

小林光恵

新刊『ケアとしての死化粧ーエンゼルメイク研究会からの提案』
小林光恵 こばやしみつえ
小林光恵のホームページ http://www02.so-net.ne.jp/~n-three/

 茨城県生まれ、東京警察病院看護専門学校卒業。看護婦として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務。その後編集者を経て独立。現在は執筆を中心に活動している。
マンガ 『 おたんこナース 』、日本テレビ系列 『 ナースマン 』原案者。
著書に 『 ナースのおしゃべりカルテ 』(幻冬舎文庫)、『 12人の不安な患者たち 』(集英社文庫)、『ケアとしての死化粧―エンゼルメイク研究会からの提案』(日本看護協会出版会)等多数。

小林光恵 最新刊
『死化粧 (エンゼルメイク) 最期の看取り』(宝島社)
(PDF 78KB)
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