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第17回
 お見舞いと告白

                          @ ← A

 しかし、和男さんは洋子さんのお見舞いに中々行かなかったのです。その理由がじきわかりました。
「前の失敗のことがあるから、いざとなると自信がなくなり、どうしても一歩が踏み出せない」と和男さん。
 それを受けて私たちは、それぞれの言葉でせっせと彼を励ましたのです。主人公を励ましつづけた「電車男」のネットの住人のようにです。
 その甲斐あって和男さんはやっとお見舞い(つまり告白)に行く決心がついたようでした。
 しかし彼はそれでもお見舞いに行かなかったのです。
「お見舞いに、何を持って行ったらいいかわからなくて・・・」と和男さん。
 単なるお見舞いではないからか、悩みに悩んでしまったようでした。再び、客の私たちは順に率直に意見を述べ、あとは和男さんが思うモノを選べば大丈夫という話になり、和男さんはしっかと頷いたのです。
 そうして和男さんは、やっと洋子さんのお見舞いに行ったのでした。お見舞いの品は……靴。中ヒールのドレッシーなデザインのを選んだとのことでした。
 私たちは、和男さんに気づかれないように頭を抱えました。洋子さんはケガの関係で、退院してからも当分は靴を履けない状態にあるのです。そんな彼女が靴のお見舞いを嬉しいと思う確率は低く、せっかくの告白もうまくいかないのではと心配になったのです。
 結果はというと、私たちの心配など無用だったことがわかりました。なんと洋子さんは、和男さんのお見舞いの靴に「励みになる」と感動したそうなのです。二人はめでたく、その日から恋人同士になったのです。
 ところで、モンドの最常連のナース朋子は、和男さんのお見舞い告白に際し、率先してさまざまな知恵を出し、根気よく熱心に和男さんを励まし続けました。和男さんへの密かな想いを胸の奥にしっかり仕舞いこんでです。

小林光恵

新刊『ケアとしての死化粧ーエンゼルメイク研究会からの提案』
小林光恵 こばやしみつえ
小林光恵のホームページ http://www02.so-net.ne.jp/~n-three/

 茨城県生まれ、東京警察病院看護専門学校卒業。看護婦として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務。その後編集者を経て独立。現在は執筆を中心に活動している。
マンガ 『 おたんこナース 』、日本テレビ系列 『 ナースマン 』原案者。
著書に 『 ナースのおしゃべりカルテ 』(幻冬舎文庫)、『 12人の不安な患者たち 』(集英社文庫)、『ケアとしての死化粧―エンゼルメイク研究会からの提案』(日本看護協会出版会)等多数。

小林光恵 最新刊
『死化粧 (エンゼルメイク) 最期の看取り』(宝島社)
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