| メ イ ン ペ ー ジ |
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Sさんの右足を桶の中のお湯につけて一分くらい経ったころ、学生の一人が不安気な声を出しました。 「あっ、Sさんが、ご、ご気分が、お顔色が…」 見上げるとSさんの顔と唇の色が、白くなっています。私たちはすぐに主任の顔を見ました。 すると、主任が口を開こうとするのを遮るようにSさんが言ったのです。 「大丈夫。続けてよ。足浴ってさ、みんなが思っている何倍も、いや何十倍も気持ちいいんだから。こうして座って、洗ってもらっているのを目で確認しながら、気持ちよさを実感するのがいいの。ほんと、足浴って気持ちいいの。だから、続けて」 主任はそれを受けて、私たちに「じゃ、手早く続けて」と言ったのです。 Sさんは、足浴のあいだじゅう「あー、気持ちいい」「足浴最高」と繰り返しつぶやき、ときどき私たちに「ほんとだよ」「ほんとなんだから」と念を押すように言いました。 そして、足浴終了時に彼女はこう言ったのです。 「もしかして、あなたたちの実習に協力するために、私が我慢して足浴してもらったみたいに思ってない?違うんだよなあ。そうだ、足浴ってさ、足浴は永久に不滅です! っていうくらい気持ちよくて最高なのよ。足浴は永久に不滅です! うん、これ、いいセリフ。ほんとなんだよ」 長嶋茂雄さんが「わが巨人軍は・・・・」と言った時の口ぶりを真似ながら言ってくれました。 しかし私たちは、Sさんの顔色の悪さから、「どう考えても、私らに経験させるためにがんばってくれたんだよね」と話し合ったのでした。 Sさんは、それからひと月後に亡くなってしまいました。 今から三年前、フットマッサージ屋さんではじめて足浴をしてもらいました。その、気持ちよさといったら…。足浴は、ありがたくて幸せな、なんとも言えない和みをもたらしてくれたのです。Sさんを思い出しました。 私たちのあんな手際の悪さでも相当に気持ちよくて、Sさんはそれを私たちに伝えたかったのだな。こんなにも気持ちいいなら、何篇でも何遍でも足浴をしてあげたかった…。そう思いました。 |
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