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第15回
 足浴は永久に不滅です

                          @ → A

 Sさん。たしか28歳。セミロングの黒髪と透き通るような白い肌が印象的な女性患者さんでした。
 私たち看護学生は、五人がかりで彼女の足浴をしました。彼女に、ベッドの端に腰掛け、踏み台の上に乗せたお湯入りの桶の中に足を入れていただいて、足浴を実施。はじめての病棟実習の三日目のことで、「ケア」と呼んでいいはじめての行為でした。ゆえに、準備はもちろんのこと、実際に足浴をはじめてからも、ちょっとしたことで手間取り、どぎまぎし、大変時間がかかってしまいました。
 私たちが、手順をささやきあいながら彼女の足元のみを見つめて洗いはじめて間もなく、監督していた病棟主任が、早口で言いました。
「Sさん、今日はここまでにしましょ!」
 私たち五人が、その声に反応して一斉に顔を上げると、Sさんの頬は青白く、唇も白くなっていました。病棟主任は、咄嗟に彼女の背中を支えていました。Sさんは、若くみずみずしい外見からは想像ができないほど悪い病状だと聞いていました。にもかかわらず、未熟な私たちは、Sさんの容態の変化を観察するのをすっかり忘れていたのです。
「止めないで!」とSさん。小さいながら意思が伝わってくる声でした。
 私たちは、自分たちの未熟さを思い知り、自信のない目を病棟主任に向けます。すると主任。
「でも、Sさん、ちょっと顔色が悪いです。続けるにしても、一旦横になって少し休まれてからにしましょう。そうさせてください」
 そう言いながら、私たちに手振りで、足浴を中断するよう指示。私たちは、Sさんへの申し訳ない気持ちと、至らなさを思い知ったショックで一杯で、彼女の足を拭く手が震えてしまいました。
 ベッドに横になったSさんは、主任に脈を計られながら言いました。
「頼むから、これで足浴終わり、なんてことにしないでね。ねっ、主任さん」
 約十分後、足浴を再開。主任が彼女に「今度は私が行います」「それと今度は寝た体勢でやりましょう」と声をかけましたが、Sさんは前回同様の姿勢(ベッドの端に座位)で、行うのは私たちで、と強く希望。看護学生の私たちで、と希望してくれたのは嬉しくもありましたが、ここはケアのプロの主任にやってもらったほうが安心なんだけど…。私はそんな気持ちでした。ほかの学生もそうだったと思います。
 私たちは、前回の足浴よりも緊張してしまい、ますます手際が悪くなりましたが、なんとか足浴を進行。主任は、いつでも対処できるようにと思っているらしく、どこか構えたような姿勢で立っていました。

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