| メ イ ン ペ ー ジ |
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「ねえ、ラジオ番組にリクエストしたことある?」 「一度だけあります」 「かけてもらえた?」 「いいえ」 「やっぱりねえ。リクエストする人がすごく多いだろうから、めったにかけてもらえないものよね」 「でも、かけてもらえる人は確実にいるわけです。可能性がないとは言えませんよ」 「でも、すごく確立が低いでしょ」 「リクエストなさりたいんですね。ハガキなら、ロビーのところにあるポストに私がお出しますよ」 Aさんは、病状により、担当医から「病棟のみ歩行可」と行動範囲を制限されていました。 「うーん、でもねえ」Aさんは俯いて、首を傾げ、少女のようにもじもじします。 「もしかして誰かに曲を贈るリクエストですか? どなたに? どんな曲? どんなメッセージつけるんですか?」 つい、聞いてしまいました。 「ひ・み・つ」 「ごめんなさい、立ち入ったことを」 Aさんは、顔をあげて「いいえ」とにっこり。 いつも面会にみえているご主人に贈るためのリクエストかも。私は勝手に想像し「私、いつでもハガキ出しますので、そのときはおっしゃってくださいね」と言いました。 その翌日、Aさんは私にリクエストハガキを託したのです。50枚はあろうという束。Aさんは言いました。 「どうしてもかけてほしくて、何枚も同じハガキ書いちゃったの。どうしても……親友にある曲を贈りたいのね、どうしても。ラジオって不思議でしょ、故人にさえも音が届くような気がするのよ。もうすぐ親友の一周忌なの」 そのハガキは、たしかにロビーのところのポストに投函しました。 その後まもなくAさんは別の病棟に移ってしまい、リクエスト曲をかけてもらえたかどうかわからないままとなってしまいましたが、<その曲はかけられたに違いない>となんの根拠もなく確信したのを覚えています。 |
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