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「イラスト:影山直美」
 原案『小林光恵』
ナースマンがゆく
テレビ放映12月11日終了!

小林光恵さんの
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第12回
 オリジナルケア

                          @ ← A

 お母さんは、バッグからハンカチを取り出し、口を押さえます。
 それを見ていた男の子は、心配でいてもたってもいられなくなったらしく、いきなり立ち上がったかと思うと、何かを思い出したかのようにまた座り、カバンの中をごそごそとやり、iポットというのでしょうか、音楽を聴く器械のイヤホンを自分の耳にあてます。<音楽を聴いて自分を落ち着かせようとしているのかな>と思いましたが、それはハズレだったことが次の瞬間にわかりました。
 彼は、しばらくイヤホンをつけて器械を操作していましたが、それを外してお母さんにこう言ったのです。
「お母さん、曲聴いてみない? ボクさ、この曲聴くとスカッとするから。もしかしてお母さんにも効くかも」
 お母さんは「え?」と言って目を丸くしましたが、「じゃ、聴いてみようかな」と応えて微笑みました。
 男の子は、お母さんの耳に丁寧にイヤホンをつけてやり、スイッチを入れました。
 某駅に到着すると、二人は降りていきました。降りる直前、曲を聴いているお母さんをちらちらと見て気にしながら、男の子は財布を取り出し、中身を確認しました。
 車中から、ホームに降りた二人を見ていたら、男の子は真っ先に自販機の前に行き、コインを入れていました。これもやはり、自分のためではなく、お母さんに飲ませるためのもののようでした。お母さんの顔色は少しよくなっていました。
 以上、男の子なりのケアの様子に心和んだひとコマです。
 私が中学生になったばかりのころ、不注意でオデコにコブを作ったことがありました。そのとき、隣の席の男子が「これ、つけていいよ」と密かに渡してくれたのは、小さな乳液びんでした。女性用化粧品の試供品でした。「せっかくだけど、いいや」と返してしまいましたが、気持ちは嬉しかったのを覚えています。

小林光恵

新刊『ケアとしての死化粧ーエンゼルメイク研究会からの提案』
小林光恵 こばやしみつえ
小林光恵のホームページ http://www02.so-net.ne.jp/~n-three/

 茨城県生まれ、東京警察病院看護専門学校卒業。看護婦として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務。その後編集者を経て独立。現在は執筆を中心に活動している。
マンガ 『 おたんこナース 』、日本テレビ系列 『 ナースマン 』原案者。
著書に 『 ナースのおしゃべりカルテ 』(幻冬舎文庫)、『 12人の不安な患者たち 』(集英社文庫)等多数。


小林光恵 新刊
『ケアとしての死化粧―エンゼルメイク研究会からの提案』(日本看護協会出版会)

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