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「イラスト:影山直美」
 原案『小林光恵』
ナースマンがゆく
テレビ放映12月11日終了!

小林光恵さんの
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第10回
 目覚まし代わり

                          @ ← A

 以前、春美さんから、患者さんの起こし方にかんする配慮について聞いたことがありました。患者さんによって嫌な起こされ方があるから、彼女は、あらかじめ患者さんにどんな起こされ方がいいか尋ねておいて、それを実行するとのことでした。声をかけられるとびくりとするから目が覚めたときに気分不快になる人、急に布団の上から揺すられたり肩に触れられたりすることでびくりとする人、といろいろらしいのです。布団の上からそっとタッチされるのを希望する方が多かったそうです。私は、病棟に勤務していた際、早朝に採血のために患者さんを起こすとき、眠そうな患者さんたちを起こすのが申し訳なくて、蚊の鳴くような声で呼びかけたものですが、患者さんに起こされ方の希望を尋ねたことはありませんでした。
 起こし方について、それだけこだわりのあった春美さんです。家族の起こし方も配慮していたに違いありません。その春美さんが過激な起こし方になっているのですから、相当ストレスがたまっていたのでしょう。
「で、ある朝、ちゃんと時間に起こしたのに、二度寝しちゃったらしくて、長男があわてて台所に降りてきて、私にぶつぶつ文句言ったの。それで私、<もう起こしてやらない>って言ったら、<それなら、セットしておけば時間になったら上半身が自動的に起こされる自動起床装置を買ってくれよ>なんて言い返されて、私、プチって切れちゃって」
 春美さんは、その夜、自宅に帰らず、実家に帰ってしまったそうです。
「ひととおり、がーっと母親にそのことを愚痴ったのよ。そしたら、話を聞き終えた母が、急に笑い出したの。春美だって学生時代はそうだった、偉そうに<明日○時に起こして>って毎日言ってたって…。なんだかバツが悪くなっちゃった」
 春美さんは翌朝、久しぶりにお母さんに起こしてもらって、出勤したそうです。春美さんが寝ている実家の二階の部屋に向かって、台所から「春美、春美」と呼ばれる声に心が解けとても落ち着いた気持ちになったそうです。
 翌朝から春美さんは、以前のように穏やかにやさしく家族を起こすことにしたそうです。すると家族も素直にさっと起き上がり、朝のムードがとても和やかになったのだそうです。

小林光恵

新刊『ケアとしての死化粧ーエンゼルメイク研究会からの提案』
小林光恵 こばやしみつえ
小林光恵のホームページ http://www02.so-net.ne.jp/~n-three/

 茨城県生まれ、東京警察病院看護専門学校卒業。看護婦として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務。その後編集者を経て独立。現在は執筆を中心に活動している。
マンガ 『 おたんこナース 』、日本テレビ系列 『 ナースマン 』原案者。
著書に 『 ナースのおしゃべりカルテ 』(幻冬舎文庫)、『 12人の不安な患者たち 』(集英社文庫)等多数。


小林光恵 新刊
『ケアとしての死化粧―エンゼルメイク研究会からの提案』(日本看護協会出版会)

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