| メ イ ン ペ ー ジ |
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「やはり、他のナースに交替したほうがよろしいのではないでしょうか。我慢なさらなくていいんですよ。そういうことはありますし。それに、通所看護がはじまったとしたら、そちらも担当の私がやらせていただくことになるわけですし、お嫌でしたら今のうちに」 「ん? そうなの?」 それまでぶすっとしていた泰司さんが、はっとしたように目を丸くして言った。マリコが答える。 「はい。交替はめずらしいことではないんですよ。どうぞ遠慮なくおっしゃってください」 「いや、そのことではなくて……」 「は?」 マリコが首をかしげると、そばにいた治子さんも同時に首をかしげた。 すると、泰司さんがぼそぼそと言ったのだ。 「通所看護というほうでもマリコさんが担当してくれるんだね」 「ええ、そうなりますね」 「そうだったのか」 そう言うと泰司さんは思わずといったふうにニヤリとすると、右手でしずかにタオルケットを引き上げ自分の顔を隠した。この瞬間から泰司さんの機嫌は直った。 治子さんが顔をしかめて低い声で言った。 「あなた、通所看護というやつに行ったらお気に入りのマリコさんにやってもらえなくなると思ってずっと拗ねたってわけね。ひと月も。嫌だわ。気持ち悪い。エロジジイって感じ!」 今度は治子さんが不機嫌になり、マリコに対し「いえ」「別に」しか言わなくなってしまった。泰司さんのときよりも、気まずい空気が室内に充満するようになってしまった。それがひと月つづいた。 9月の末、息子の健司さんに縁談話が舞い込み、それを大いに喜んだ治子さんの不機嫌はどこかに吹き飛んでしまったのだった。そしてマリコは、以前のように和やかな雰囲気で泰司さんのケアを行えるようになったのである。 以上の経過を聞き終えた私がマリコに「とにかく一段落して、よかったね」と声をかけると、「まあ、そうだけど・・・」とマリコは目を伏せました。 「そこで話が終わればよかったんだけどね。実は息子の健司さんにね、<縁談話の人とは結婚したくない。結婚してほしい>っていきなり言われて・・・。私はそんな気は全然ないから即丁重にお断りしたんだけど、以来、息子さん、元気なくなっちゃって」 なるほど、はじめにマリコが追加でついたため息の訳はこれだったようです。 |
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