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「イラスト:影山直美」

小林光恵さんの
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第1回
 ナースの休憩室内の天気はくるくる変わる

                          @ ← A

 これは、臨床ナースを続けているA子からの返事です。
「くわしい状況、その医師とご家族とのそれまでの関係はどうだったかとか、医師のそのときのしぐさとか表情とか、こまかなことがわからないとなんとも言えないけど、携帯電話を時計代わりにしていたってことは、細菌の温床となる腕時計をつけていなかったってことでしょ。つまり、院内感染防止に対して意識が高いということじゃない? いいように解釈してあげるならね。もし、ふざけたようなストラップをじゃらじゃら付けた携帯電話を持ち出して臨終告知したのなら、その医師、わたしのところに連れてきなさいよ。事情聴取後にしかるべき対処をするから」
 次、看護職を離れてご主人の自営業を手伝ってるB子からの返事。
「医師が時刻を確認した携帯って、院内で業務用に使ってるピッチなんじゃないの? 投稿した彼がそれを知ってたら、また感じ方は違ったかもしれないよね。そういえば私の祖父が亡くなって退院するとき、父は担当医が最後まで顔を見せなかったことが余程納得がいかなかったようで、いまでもそれを言うわよ。それにしても、いきなりこういうメール送ってくるって、あんた、なにかあった?」
 みなさんは、この投稿記事にかんしてどんなことを思われました? よかったらご意見をお聞かせください。

 さて、A子とB子と私は、先の新聞投稿にかんするメールをきっかけに、二人同時に送信する式のメールをチャットさながらに送りあうやりとりを開始。三人ともたまたまパソコンの前にいて、時間にも余裕があったため、なんの気兼ねもなく好き勝手に思うことを述べあいました。
 しばらくそのやりとりをつづけているとA子から「なんか、昔、三人で夜勤やって、休憩室でのびのびおしゃべりした夜のこと思い出しちゃった」とメール。B子も私もすぐに思い出し、そのことを返信しました。あの夜私たち三人は、気のおけない同期だけでの夜勤でした。未熟者同士で不安ながらも、休憩室では思う存分手足を伸ばして、あれこれ好きなことを言い合ったのでした。休憩室にはスタッフ用の冷蔵庫が置かれていました。その中に入れてある飲み物のパック(マジックで所有者の名前が書いてある)を取り出し、パックを本人に見立てて、パックに向かって言いたいことを言ったりしました。たとえば「ヨウコ先輩、あんたの雷は怖すぎる!」とか。あのときの私たちにとって文句なく晴天だった休憩室でした。
 昨日、久しぶりにヨウコ先輩の家に遊びに行ってきました。彼女は、ナース休憩室の天気を変えるのが大得意だった人で、数年前から子育てに専念しています。
 私が訪ねる直前に、ヨウコ先輩はご主人と子供たちに大きな雷を落としたようで、室内はシーンとしずまりかえっていました。いまも先輩は、家庭内の天気をくるくると変えているようなのです。さすがヨウコ先輩。
 思えば、ナース休憩室に限らず、外の天気とは別に屋内のいろんな場所で、くるくるとそこだけの天気が変化しているわけですよね。いまの、あなたのいる場所の天気はどんなふうでしょうか。


小林光恵

新刊『ケアとしての死化粧ーエンゼルメイク研究会からの提案』
小林光恵 こばやしみつえ
小林光恵のホームページ http://www02.so-net.ne.jp/~n-three/

 茨城県生まれ、東京警察病院看護専門学校卒業。看護婦として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務。その後編集者を経て独立。現在は執筆を中心に活動している。
マンガ 『 おたんこナース 』、日本テレビ系列 『 ナースマン 』原案者。
著書に 『 ナースのおしゃべりカルテ 』(幻冬舎文庫)、『 12人の不安な患者たち 』(集英社文庫)等多数。


小林光恵 新刊
『ケアとしての死化粧―エンゼルメイク研究会からの提案』(日本看護協会出版会)

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