| 今月のコラム第38回 2006/6 | ||||||||||||||||||||
| 改正介護保険で、より重要性を増す訪問看護事業 | ||||||||||||||||||||
| ■改正介護保険制度がこの4月から施行され、これまでの在宅ケアのあり方が大きく変わろうとしています。また、入院期間の短縮化により在宅での療養を余儀なくされる高齢者が増大し、訪問看護がより重要性を増してきそうです。今回は日本訪問看護振興財団の佐藤さんに、訪問看護の現状や、これからの在宅ケアの問題点などについておうかがいしました。 | ||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||
【地道な調査研究と実践の場から制度化へ】 私ども(財)日本訪問看護振興財団(※)のメインの仕事は、訪問看護の普及や振興のための調査研究と研修事業です。調査研究について少しご紹介しますと、’94年くらいからしばらくはケアマネジメント関係の開発をしました。‘00年になって高齢者虐待関係の調査を3年間くらい行い、昨年成立した高齢者虐待防止法案につなげています。また、‘02年度あたりから、ALSの患者さんで頻繁に吸引の必要な利用者に、在宅でどう支援していくかということをテーマとし、人工呼吸器を装着している人の在宅療養支援システムに関する研究をずっとやってきています。 それから’03年から3年かけた研究で、介護事業所における小規模多機能化事業、通所看護等の検証を行なっています。実はその前年、’02年に訪問看護ステーションにおける多機能設置モデル事業を行ないました。これはどういうものかと言いますと、訪問看護は利用者のお宅に訪問して1時間か1時間半くらい滞在して看護を行ないますが、1週間に1〜2回では、家族の介護負担の軽減にはなかなかつながりません。それなら、医療ニーズと介護ニーズを併せ持っている看護の必要な人に、訪問看護ステーションに来てもらえばどうだろうということで、9ヵ所くらいモデル事業でやってみたのです。その結果、たいへん効果があって、介護者も本当に助かるということでしたので、今度はそれを制度に結びつけることを考えたわけです。平成17年度には、介護保険サービスにおける看護提供体制のあり方に関する調査研究事業を行ない、今回の介護報酬の改定で、「療養通所介護」の制度化に結びつきました。今年4月1日からスタートしています。 これは私どもが地道に研究活動を行なって、実践の場から制度化につなげた本当に珍しい形です。せっかく制度化されましたから、これからその制度を育てていくために、「療養通所介護推進ネットワーク」を支援していくことにしています。 【病院のナースに期待したい訪問看護との連携】 現在、訪問看護ステーションの数は全国で約5500ヵ所あり、それぞれが独立採算の事業所です。また、設置主体は医療法人や財団、社団法人、NPO法人、会社などさまざまです。今回の介護保険改正の中で、介護サービス事業所の情報開示が義務付けられましたので、今後はインターネットでどこからでも見られるようになりますし、インターネットで見られない方には市町村がペーパーでお渡しできるようになります。利用者の方は、それによってどの訪問看護ステーションを選ぶかを考えることができるようになりますね。 これからは病院の病棟看護師が、その地域にどんなステーションがいくつあるかということを知っていて、病院を退院される患者さんで訪問看護が必要だと判断した方に、訪問看護につないでほしいと思っています。患者さんが一番不安なのは退院直後から2週間くらいです。病院に入院している間、患者さんは治療も看護も食事も全部あるわけですが、自宅に帰った途端に何もなくてどう対処したらいいのかわからないので不安なんです。例えばお風呂一つとっても、入浴していいのかどうか心配なわけです。心筋梗塞などで手術して退院したような人には必ず訪問看護をつけて、入浴介助しながらその人の身体に与える状況、お風呂がどのくらい負荷がかかるかということなどもチェックして安心してお風呂に入れるようにしてあげたいですね。1ヵ月間はケアのマネジメントをしてあげたいし、看護にはそれができます。服薬チェック、健康状態もチェックしながら、その人の食事、排泄、入浴の看護もできますから。訪問看護をうまく活用してもらえればいいなと思っています。 【増えてきた病院のナースからの訪問看護師希望】 訪問看護師は、以前は潜在看護師を掘り起こし、訪問看護師養成講習会を終了した人が訪問看護ステーションで働くという流れがありました。しかし、最近は病院で4〜5年勤めている人が、訪問看護をやりたいからということで、訪問看護師養成講習会を受講する方が増えてきています。先日、K県の講習会に呼ばれて講演した時も、83名の参加者中、潜在看護師は数えるくらいで大部分は病院で働いていた人たちでした。 そういう流れになってきた理由として、在院日数を短縮して在宅に帰すようになったことで、かなり医療ニーズの高い方が増えてきたことがあげられます。しかも在宅でターミナルケアをするとなると、長年職場を離れていた人たちが、講習を180時間受けただけでというのは技術的になかなか難しくなってきています。それから、病院での看護は、シフトの中の一こまで5分単位くらいで患者さんを回って看ていくわけですが、訪問看護ですと1日に4人くらい、1人に1時間半くらいはたっぷり関われます。そして、やったことに対しての評価が返ってきます。そういう意味で満足度が高いんですね。しっかりアセスメントもできてケアもできなくてはならない。やりがいも責任もありますよね。中途半端な人はできないだろうと思いますが、そういう積極的な理由から病院の看護師さんの希望が増えているのだと思います。 【利用者の重度化で増大する看護の必要性】 今回の改正で、軽度の人は介護予防ということで保険利用が大幅にカットされましたので、本当に軽度者のサービスに限定されました。小規模多機能でも老々介護などで本当に困っている人を引き受けざるを得なくなってきています。グループホームでも、認知症の方で重度化したりあるいはがんの人も入ってきたり、末期まで看るなどということになると、どうしても看護が必要になってきます。福祉主導ではあるけれど、状態に応じて看護も関わらざるを得なくなってきているのが実情です。 ターミナルケアも大きな問題になってきますね。今年の介護報酬・診療報酬改定で、在宅ターミナルケア推進ということが出ています。病院で亡くなるのはなるべく避けたいという方針なのです。現在は8割くらいが病院で亡くなっていますが、’55年には2割くらいでした。完全に逆転しているんですね。ですから’55年の時の、2割が病院で在宅が8割、そういう状況まで近づけたいという思いが国にあるのです。 そのため、往診や訪問診療をして、24時間いつでも駆けつけられるような診療所を作ろうと、在宅療養支援診療所を認定し、その報酬を今回すごく高くして誘導しているわけです。しかし通常は、診療所も医師が1人2人と看護師が何人かしかいませんから、これからは訪問看護ステーションと連携しあって、在宅看取りまでしていこうという流れになっていくと思われます。 【介護保険充実の陰にあるチームケアの問題点】 介護保険がたいへん充実してきたがための問題も出てきています。在宅ケアは、医師、訪問看護師、ホームヘルパー、あるいは理学療法士、栄養士、歯科衛生士、薬剤師、さまざまな人が関わって支援していくわけですから、舵取りがしっかりしていないと、ばらばらで困ってしまいます。今までは訪問看護が何でもできましたので、さまざまな人の役割を一手に引き受けていたところがありました。しかし例えば、ケアマネジャーという新しい職種ができたためにすごく複雑になってきました。 ケアマネジャーは登録資格で、その中の3割は看護職ですが、あとの7割は全然違う職種の方です。そうすると利用者の方が、入浴介助を週3回希望すると、ホームヘルパー導入のケアプランが作られてしまうことが起こってきます。手術して退院直後だったりすると本当に入浴がいいのかどうか、シャワー浴あるいは清拭にしないと、その人に負荷がかかりすぎるのではないかなどという判断が何もなくて、ホームヘルパーさんが週3回行くことになります。これではせっかく退院したのにまたすぐ入院するような事態が起こりかねません。 私としてはターミナルケアや難病の方など、医療ニーズを持っている重度の人たちについては、ケアマネジャーというよりむしろ訪問看護が先に行って、ケアマネジャーを巻き込んでいく。そういうやり方をすることによって、在宅療養が安心して始められるのではないかと思っています。まず医師と看護師が利用者のところに一緒に行って、「こういうことが必要ですね」というふうにしてケアマネジャーにつなぐ。チームケアの形をきちんとして利用者が安心して利用できるようにしたいですね。 |
||||||||||||||||||||
| プロフィール 佐藤 美穂子 氏
|
||||||||||||||||||||
(C) 2006 Nursing-plaza.com steering committee All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。 |
||||||||||||||||||||